東九州新幹線(ひがしきゅうしゅうしんかんせん)は、福岡県福岡市から東九州の大分県大分市附近、宮崎県宮崎市附近を経由して、鹿児島県鹿児島市に至る新幹線の基本計画路線である。
概要
概略
1973年11月15日の「昭和48年運輸省告示第466号」によって、建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画に追加された。
山陽新幹線との共用区間を除く延長が約390kmとされており、福岡市からの一部区間では既存の山陽新幹線の線路を共用することが想定されている。また、約390kmという延長は、日豊本線(小倉駅 - 鹿児島駅間)の総延長467.2 kmを2割近く下回り、在来線に比してルートの短縮が図られている。途中の大分市附近では、同じく基本計画路線である四国新幹線及び九州横断新幹線との接続が予定されている。
基本計画が決定されたのは高度経済成長期であったが、その後のオイルショックや国鉄の経営悪化などの状況変化のため、工事のために必要な調査さえ行われておらず、着工には至っていない。
東九州沿岸地域は、西九州地域と比べ、鉄道の高速化や高速道路(東九州道)の整備が遅れ、かつては裏九州、陸の孤島と呼ばれることもあった。近年、高速道路の開通や在来線の高速化によって交通の整備が進みつつあるものの、今もなおインフラ整備が遅れているという声は多い。他方で、1973年の基本計画決定時点で、西九州の代表的都市である長崎市の人口(当時約50万人)は、同じく東九州の代表的都市である大分市(当時約30万人)の人口を大きく上回っていたが、2000年の国勢調査で大分市が逆転している。
福岡県、大分県、宮崎県、鹿児島県、北九州市の4県1市で構成する東九州新幹線鉄道整備促進期成会や、九州経済連合会等で組織する東九州軸推進機構は、国に対して整備計画線への格上げの要望を行っている。また、2012年秋には九州地方知事会も整備計画線への格上げを求める特別決議を採択している。
2015年6月29日、大分県が東九州新幹線の調査費として809万円を、2015年度一般会計の7月補正予算案に盛り込んだと発表した。
ルート
従来は、起点の福岡市から北九州市(小倉駅)を経由し、日豊本線に沿って大分方面へ結ぶルートが前提とされてきた。しかし、1973年公示の基本計画では「起点:福岡市」「終点:鹿児島市」「主要な経過地:大分市附近、宮崎市附近」と規定されているのみであり、当時、北九州市は九州において人口最大の都市であったが、「主要な経過地」に指定されていない。これまでの日豊本線沿いルートのほか、2023年頃からは久大本線沿いルートも浮上するようになったが、これは北九州市が経過地に指定されていないという隙を突いたものだという見解がある。
2023年11月21日、大分県は福岡市から大分市までの区間を日豊線と久大線沿いの2ルート案で比較した結果、費用対効果の試算はわずかに日豊線ルートが高いとする調査結果を発表した。この調査は、大分県の東九州新幹線整備推進期成会が野村総合研究所に委託したものであり、小倉-大分間は新たに整備し、久大線ルートは九州新幹線の線路の一部を活用して、新鳥栖駅から大分駅までは新設することを前提としたものである。
日豊線ルートでは、北九州市長が北九州空港を経由する案に関心を示しているほか、東九州新幹線鉄道整備促進期成会は「北九州空港、宮崎空港、鹿児島空港等を経由させることもルート案の選択肢の一つとして有効」としている。
整備についての検討
需要
鉄道ジャーナリストの梅原淳の試算によると、「福岡-大分間の特急電車利用者は1万1千人/日にのぼる。これは、北陸新幹線が建設されている首都圏-富山・石川間の5千人/日を上回り、関西圏-福井・富山・石川間の1万4千人/日に匹敵する。また、交通機関別に見ると、現在の福岡-大分の鉄道利用者は7.8%に過ぎず、新幹線の開通によって他の交通機関からの振り替え需要も期待される」とされている。
一方、大分県、宮崎県の人口は都道府県別で33位、37位と下位にとどまる。また、大分駅の1日あたりの平均乗車人員は16,982人で九州内で4位であるものの、宮崎駅は4,715人で30位以内にも入っていない。これらのことから需要に疑問を示す報道もある。
2023年11月21日の日本経済新聞の報道によると、博多-大分間の一日当たりの利用者数の見込みが日豊線ルートが2万3973人、久大線ルートが2万2163人とされた。
効果
東九州新幹線の着工のめどが立たない間、在来線である日豊本線の高速化が進められており、路線改良や振り子式車両である883系・885系の投入等によって、博多駅 - 大分駅間の所要時間は20分ほど短縮されて、約2時間となっている。
大分県は2016年1月18日に、東九州新幹線が全線開通し、日豊本線と同じルートを、北陸新幹線の平均時速と同じ180kmで走行すると想定した場合の主要駅間の所要時間を試算し、短縮効果を示した。
また、東九州新幹線鉄道建設促進期成会も2016年3月23日に、新幹線の運行に適したルート(380km)を、九州新幹線、北陸新幹線と同じ平均速度(表定速度)210km/hで走行すると想定した場合の主要駅間の所要時間の調査結果を公表した。
2023年11月21日の大分朝日放送の報道によると、現状では大分から博多までは約2時間、大阪までは4時間以上という現状が東九州新幹線開業により、日豊線ルートなら大分から博多まで47分・大分から大阪まで約3時間半、久大線ルートなら大分から博多まで46分・大分から大阪までは4時間強に変化するという試算が出た。
費用対効果については、「社会的割引率」を2%とした場合、日豊線ルートが1.27、久大線ルートが1.23となった。
2023年11月23日の朝日新聞デジタルの報道によれば、熊本-大分間だと、最短所要時間は日豊線ルートが79分、久大線ルートが56分と差があった。
計画沿線の交通インフラ
- 北九州市 - 大分市 - 鹿児島市間
- 日豊本線
- 北九州市 - 大分市 - 宮崎市間
- 東九州自動車道(北九州JCT - 清武JCT)
- 宮崎市 - 鹿児島市間
- 宮崎自動車道、国道10号、九州自動車道
脚注
注釈
出典
関連項目
- 九州新幹線
- 九州横断新幹線
- 四国新幹線
- 建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画
- 東九州自動車道
- ソニック (列車)
- 日豊本線
- 久大本線
外部リンク
- 東九州新幹線について 大分県




