東武20000系電車(とうぶ20000けいでんしゃ)は、東武鉄道の通勤形電車である。

本項では、初期型の20000型電車、ならびにマイナーチェンジ車の20050型電車・20070型電車について記述し、さらに20000型・20050型・20070型を4連化して日光線・宇都宮線向けに投入した20400型電車20410型電車20420型電車20430型電車20440型電車)についても記述する。なお、個々の編成を表す場合は浅草・中目黒寄り先頭車の車両番号の末尾に「F」(「編成」を意味する英語Formationの頭文字)を付して表記する。

概説

伊勢崎線と帝都高速度交通営団(現・東京地下鉄)日比谷線との直通運転に使用されていた2000系の置き換えおよび車両冷房化を目的に製造され、1988年(昭和63年)3月25日に営業運転を開始した。

24編成192両が導入され、製造はアルナ工機・東急車輛製造が担当した。投入時期により、20000型・20050型・20070型の3形式が存在する。

1995年にアルナ工機で製造された伊予鉄道610系電車は前面形状こそ独自設計の非貫通型であるが、側面窓配置は20000型に準じている。

形式概要

以下は時制にかかわらず、特記がなければ現役当時の情報を指す。

乗り入れ先となる日比谷線の当時の規格に合わせて18 m級車体となっており、編成はすべて制御車・電動車のみのMT比6M2T・8両固定編成で構成されている。

非常用ドアコックは、地上専用車とは異なり東京メトロの車両と同じものが使用されている。また、非常通報ボタンの下にも東京メトロの車両と同じ注意書きプレートが掲出されている。

1996年(平成8年)後半頃からは、20000系・20050系全車両(20070系は製造当初から)の車体側面部に「日比谷線 直通」と表記したプレートを貼り付けするようになった。

20000型

1988年から1992年(平成4年)までに8両編成13本(104両)が製造された。

ほぼ同時期に導入された10030系に準じて、オールステンレス製軽量車体構造およびボルスタレス台車が採用された。両開き3扉車の窓配置はdD2・2D2・2D1と本系列独特の配置としている。正面の非常口は車掌台側の端に寄せており、運転台スペースが広く取られている。

主回路制御は有楽町線直通用の9000系と共通の、AFE(自動界磁励磁制御)式主回路チョッパ制御を採用している。主電動機は10000系列との共通の、出力140 kWの直流複巻電動機を採用している。

21803Fは、2007年11月10日から同年11月30日までの期間限定で「東武鉄道創立110周年記念トレイン」として運用され、車内には同社の歴代車両のポスターが掲出された。

21811Fは1995年3月20日に発生した地下鉄サリン事件で被害に遭った編成である。

20050型

1992年からは仕様を変更し、日比谷線での朝ラッシュ時の混雑緩和を目的として編成の前後各2両を5扉車としている。同年12月29日より運行を開始。8両編成8本(64両)が製造され、先頭車の正面には5扉車であることを示す「5DOORS」マークを掲出する。

主要機器の見直しも行われ、主回路制御にGTOサイリスタ素子によるVVVFインバータを採用するとともに、LED式行先表示器や液晶式車内案内表示器(シャープ製。5扉車の増設ドアを除く全ドア配置)、ドアチャイムなどを装備している。このうち液晶表示器は維持費がかかり、液晶ディスプレイ自体の劣化も進んでいため、1999年(平成11年)に9050系のものとともに撤去し、その位置は広告枠とされた。

本形式から自動放送装置を設置した。伊勢崎線内・日比谷線内ともに女性の声で英語放送にも対応している。伊勢崎線内では当初男性の声であったが、2011年頃に50050系などと同じ女性の声に更新され、英語放送に対応した。なお日比谷線内での自動放送は東京メトロ発足後しばらく使用されていなかったが、2004年秋頃に使用を再開した。

導入当初は東武線内では5扉開閉での運用を行っていなかったが、1993年(平成5年)3月1日から日比谷線03系とともに5扉開閉を開始した。この時は、以降の混乱を避けるため同年2月26日から2月28日まで朝ラッシュ時の8本の列車のみで試験的に実施していた。2014年(平成26年)時点での5扉車の3扉開閉は、整列乗車のために始発駅でのみ行われ、発車後に車掌より次の駅から5扉すべて開閉する旨のアナウンスがなされている。

2000年(平成12年)3月8日に中目黒駅構内で発生した脱線衝突事故により、21852Fの中間車2両(モハ23852・モハ24852)の車体が2001年(平成13年)4月に東急車輛製造において代替製造された。

20070型

列車増発用として1996年(平成8年)より8両編成3本(24両)が製造され、1997年(平成9年)3月25日に運行を開始した。

5扉車の所要編成数に達していたことから、両端の5扉車を3扉車に戻している。主要機器はおおむね20050型に準じているが、シングルアーム式パンタグラフ、30000系に準じたLEDスクロール式車内案内表示器(千鳥配置)を装備している。さらに補助電源装置は東芝IGBT方式SIV(190 kVA)に変更の上容量増強した。車体では、戸閉装置を変更し、側扉のガラスを複層ガラスに変更した。

20400型

日比谷線直通列車は2017年(平成29年)から20m級車体・7両編成の70000系による置き換えが開始され、これによって余剰となる当系列については、同年6月の有価証券報告書にて「4両編成・ワンマン化改造工事」の予定があることが明らかにされた。

その後、2018年6月の東武宇都宮線の利用促進キャンペーン「東武宇都宮線フリー乗車DAY」の詳細公開で形式が20400型となること、宇都宮線で運用されることが明らかとなった。その後、2018年7月に20000型を改造した20400型電車が報道陣向けに公開された。

改造工事は日立製作所と津覇車輌工業の両社で実施されており、種車の種類により20410型・20420型・20430型・20440型の4型式に分類される。

改造内容

  • 車体の帯色は「SL大樹」をイメージした濃紺色に変更、扉位置の視認性向上のためドア横に黄色の横縞を加えている。先頭車の前面窓下部には濃紺色の上に黄色を配置
  • 乗務員室にワンマン運転用機器を設置してワンマン化対応改造、運転台コンソールを一新するとともに主幹制御器を左手操作式のワンハンドルマスコンに変更、運転台下の足元に温風式ヒーターを新設
  • 運転台右側に配置されているモニター装置は新型の日立製 Synaptra に変更、放送装置には自動案内放送装置を新たに設置
  • 前照灯をコイト電工製の熱線入り花形LEDタイプに交換、行先・列車種別表示装置もコイト電工製のセレクトカラータイプのフルカラーLEDに変更
  • 接客設備は、内張り・床材・腰掛けを70000系の意匠をベースとしたものにリニューアル、浅草方から2両目と3両目の連結面側にフリースペースを設置、座席のドア回りに大型の袖仕切を設置、客用扉上部の鴨居部の車内案内装置はコイト電工のパッとビジョンにより横長のLCD式に変更され千鳥状に配置(1両当たり3ヶ所)
  • パンタグラフは浅草方から2両目に1基増設する形で2基搭載。20050型を種車とする場合は、既存の下方交差型の物をシングルアーム型に交換
  • コンプレッサー(電動空気圧縮機 ナブテスコHS-20C)を両先頭車に1基ずつ設置
  • 東武鉄道初となる客室扉の個別ドア開閉ボタン(車外は開ボタン、車内は開閉ボタン)を設置
  • クーラーを東芝製RPU-4019Aに統一
  • M車用台車には増粘着装置(ミュージェット)を新設

これらに加えて旧20050型5扉車は、両端と中央を除く2箇所の扉部全体を塞いで3扉車に改造し、1100ミリメートルの側窓および座席の設置と座席下に900ワットのヒーターを設置した。また、2019年より車外安全確認カメラと撮影した映像を運転席に表示するホーム監視モニタの設置が改造メニューに追加され(2019年以前に20400型へ改造された編成は追設、2019年以降に20400型に改造された編成は当初より設置)、2020年6月のダイヤ改正より使用を開始している。

20410型

種車は先頭車・中間車とも20070型。SIVはIGBT素子。

種車が3扉であるためそのまま3扉である。

20420型

種車は先頭車が20000型、中間車が20070型。SIVはIGBT素子。

種車が3扉であるためそのまま3扉である。

20430型

種車は先頭車・中間車とも20050型。SIVはGTO素子。

種車の20050型の先頭車は5扉であるため先頭車は5扉からの3扉改造車、中間車は種車以来そのまま3扉である。

20440型

種車は先頭車が20000型、中間車が20050型。SIVはGTO素子。

種車のうち20000型は3扉であるため先頭車はそのまま3扉、中間車は1両が種車以来そのまま3扉でもう1両が5扉からの改造による3扉である。

運用

日比谷線直通時代

20000型・20050型・20070型は系列の違いによる運用の区別はなく、全編成共通で東武車の運用(運行番号の末尾「T」)で使用されていた。定期列車の走行区間は、南栗橋駅 - 北千住駅 - 日比谷線中目黒駅間であり、東急東横線への乗り入れはなかった。日比谷線への直通列車のほか、東武線内のみを走行する列車や、走行距離の調整で日比谷線内のみを走行する列車もあった。いずれも各駅停車で運行されていた。

2017年から日比谷線直通列車は70000系への置き換えが開始され、2020年3月27日に全車が日比谷線直通運用から撤退した。なお、20000型としては2020年3月26日に21807Fが、同年3月27日に21856Fが最後の運用となった。

ワンマン化改造後

2018年9月3日から日光線の南栗橋駅 - 新栃木駅間と宇都宮線で営業運転を開始し、2019年5月までに同線の8000系をすべて置き換えた。運用開始当初は宇都宮線内完結もしくは栃木駅迄の運用が大半を占めたが、2019年9月24日より日光線南栗橋駅 - 新栃木駅間の日中の列車でも運用を開始し、順次同区間の6050系や10000系列を置き換えていった。2020年6月6日のダイヤ改正に合わせて同区間の10000系列をすべて置き換えると共に南栗橋駅 - 新栃木駅間でのワンマン運転を開始し、同年11月9日からは日光線新栃木駅 - 東武日光駅間でも運用が開始された。2021年7月1日からは鬼怒川線下今市駅 - 新藤原駅間および日光線の区間急行でも運用を開始し、同年11月16日からは日光線の急行にも進出した。最終的に2022年3月12日のダイヤ改正で6050系の運用をすべて置き換え、併せて区間急行が廃止されると共に日光線新栃木駅 - 東武日光駅間および鬼怒川線全線でのワンマン運転を開始した。

他社への譲渡

本形式の中間車2両はアルピコ交通に譲渡され、京王重機整備にて先頭車化などの各種改造を施工され同社の20100形として2022年3月25日に運行を開始した。なお、2022年以降も1年に2両のペースで順次譲渡され、最終的には中間車8両(すでに譲渡された車両含む)が譲渡される予定である。東武鉄道の旅客用車両が他社に譲渡されるのは、1995年に上毛電気鉄道に導入された350型以来となる。

仕様

編成表

凡例
  • CHOP:主回路チョッパ制御装置
  • VVVF:VVVFインバータ制御装置
  • CP:空気圧縮機
  • SIV1:GTO式静止形インバータ(140 kVA)
  • SIV2:IGBT式静止形インバータ(190 kVA)

上記のデータは鉄道図書刊行会『鉄道ピクトリアル』2008年1月臨時増刊号「東武鉄道特集」による。

脚注

注釈

出典

関連項目

  • 伊予鉄道610系電車
  • 東武2000系電車
  • 東武70000系電車

外部リンク

  • 車両紹介 - 東武鉄道ポータルサイト
    • 20000型(インターネットアーカイブ)
    • 20050型(インターネットアーカイブ)
    • 20070型(インターネットアーカイブ)
    • 20400型

鉄道車両図鑑-東武20000系

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